日報の集計作業を自動化して月15時間削減
「毎月月末は日報の集計作業に追われる」「手書き日報をExcelに転記するだけで2時間以上かかる」
建設業では、現場監督が提出した日報を事務所で集計し、週報や月報を作成する必要があります。しかし、この集計作業に膨大な時間がかかっているのが実情です。本記事では、日報のデジタル化とデータ出力で集計作業を効率化し、月15時間削減する方法を解説します。
日報集計の現状と問題点
従来の集計作業フロー
多くの建設会社では、週次で約130分(2時間10分)、月次では約520分(8時間40分)もの時間を日報集計に費やしています。
典型的な週次集計の流れは次のようになっています。まず、各現場監督から日報を回収する作業に約20分かかります。紙、メール、FAXなど形式がバラバラで、見つからない日報を探すことも少なくありません。次に、日報の内容をExcelに手入力する転記作業に約60分を要します。作業時間や人数・工数を集計用シートに1件ずつ入力していきます。
その後、案件別の工数合計や職種別の集計、進捗率の計算などに約30分、集計データからグラフを作成してレイアウトを調整し、体裁を整える作業に約20分かかります。
何が問題なのか
問題1:手作業による転記に時間がかかる 同じデータを何度も入力する必要があり、日報から集計シートへの転記作業では数字の読み取りと入力を繰り返すため、膨大な時間がかかります。
問題2:転記ミスの発生 手入力のため数字を間違えたり、日付の入力ミスや案件の振り分けミスが発生します。これらのミスを後から発見・修正する作業も追加で必要になります。
問題3:集計作業の属人化 集計作業が特定の人しかできない状態になっており、その人が休むと集計できません。引き継ぎも困難で、業務の属人化が進んでいます。
問題4:データの再利用が困難 紙やバラバラのExcelファイルで管理されているため、過去データの検索が大変で、分析にも使いにくい状態です。

デジタル化で効率化できること
効率化1:転記作業の削減
デジタル日報システムでは、現場監督がスマホやPCから案件名、日付、作業時間、人数、工数などを直接入力します。入力されたデータはすべてデジタル形式で保存されるため、手書きからPCへの転記作業が完全に不要になります。また、プルダウン選択や定型入力により、入力ミスも大幅に減少します。
効率化2:CSV出力で集計が簡単に
デジタル化された日報データは、集計したい期間を選択するだけでCSV形式でダウンロードできます。例えば、1月1日から1月31日までの期間を指定してダウンロードすれば、すべての日報データが一覧形式で出力されます。
出力されたCSVデータをExcelで開けば、ピボットテーブルで案件別、日別、担当者別など自由に集計でき、グラフ作成も簡単です。手入力が不要になり、集計作業が大幅に短縮されます。
効率化3:データの一元管理
すべての案件の日報データが一箇所に集約され、全期間のデータにいつでもアクセスできます。過去データも簡単に検索でき、必要な期間だけを抽出したり、年間データの分析も可能になります。
効率化4:データの再利用
一度入力したデータを何度も活用できるのが、デジタル化の大きなメリットです。週報作成では1週間分のデータをCSV出力し、Excelのテンプレートに貼り付けて集計・グラフ化します。月報作成では1ヶ月分のデータを出力し、同じテンプレートで処理することで、過去月との比較も容易になります。さらに、年次分析では1年分のデータを出力して年間の傾向分析を行い、次年度の計画立案に活用できます。

月15時間削減の内訳
削減できる時間
デジタル化によって、具体的に以下の時間削減が実現できます。
転記作業の削減:月4時間 従来は週60分かけて手書き日報をExcelに転記していましたが、デジタル化後はこの作業がゼロになります。週60分削減 × 4週で、月240分(4時間)の削減です。
データ整理の削減:月2時間 従来は週30分かけてバラバラの日報を整理していましたが、デジタル化によりすでにデータとして整理されているため不要になります。週30分削減 × 4週で、月120分(2時間)の削減です。
集計作業の削減:月1.3時間 従来は週30分かけて手計算やExcel関数を設定していましたが、デジタル化後はCSV出力してピボットテーブルで集計するだけで10分に短縮されます。週20分削減 × 4週で、月80分(1.3時間)の削減です。
レポート作成の削減:月2.8時間 従来は月200分かけて月報を作成していましたが、デジタル化後はCSVからテンプレートへ貼り付けるだけで30分に短縮されます。月170分(2.8時間)の削減です。
エラー修正の削減:月1.3時間 従来は月90分かけて転記ミスの発見と修正を行っていましたが、デジタル化後は10分程度に短縮されます。月80分(1.3時間)の削減です。
月間合計削減時間:約11.5時間
※さらに、データ検索や過去データ参照の効率化を含めると月15時間以上の削減が可能です。
削減時間の活用
削減された15時間は、データ分析による業務改善、新規案件の検討、社員教育などに充てることができます。また、定時退社を実現してワークライフバランスを向上させることも可能です。時給2,000円で換算すると、15時間 × 2,000円で月30,000円のコスト削減効果があります。
効率化を実現する具体的な方法
ステップ1:日報のデジタル化
デジタル日報システムを導入し、現場監督がスマホ・PCから直接入力できる環境を整えます。手書きの転記作業がなくなり、データとして自動的に蓄積されます。テンプレートや定型文を活用し、プルダウン選択で簡単に入力できるようにすることで、入力時間も短縮できます。
ステップ2:CSV出力とExcel活用
CSV出力は非常にシンプルです。まず集計したい期間の開始日と終了日を指定し、出力ボタンをクリックするだけでCSVファイルがダウンロードされます。これをExcelで開けば、すべての日報データが一覧表示されます。
Excelでの集計には、ピボットテーブルが便利です。行に案件名、列に日付、値に工数の合計を設定すれば、案件別・日別の工数が自動集計されます。関数を使えば、特定案件の工数合計も簡単に算出できます。ピボットグラフを使えば、案件別工数の推移や職種別の稼働状況を視覚化できます。
ステップ3:集計テンプレートの作成
効率化の鍵は、Excelテンプレートの整備です。週報テンプレートでは、CSV出力したデータを貼り付け、ピボットテーブルで集計すれば、グラフが自動更新され、印刷またはPDF化できます。
月報テンプレートでは、1ヶ月分のCSVデータを貼り付けると、案件別・職種別に自動集計され、前月比較も自動計算されて、経営者向けレポートが完成します。
原価管理テンプレートでは、工数データを貼り付けて単価を掛けることで人件費を算出し、予算との比較や利益率の計算ができます。
ポイント: 一度テンプレートを作れば、毎回データを貼り付けるだけで済むため、継続的な効率化が実現します。
ステップ4:データ活用の標準化
集計ルールを統一することが重要です。案件名の表記を統一し(略称禁止)、職種の分類(電気工、設備工等)や工数の単位(人・時間に統一)を決めておきます。
定期的な集計タイミングも決めておきましょう。週報は毎週金曜日、月報は月末締め、原価管理は月次といった具合です。テンプレートを共有して誰でも集計できる体制を整えることで、属人化を解消できます。
データ活用の具体例
活用例1:案件別の工数分析
CSV出力から案件別の工数を分析すると、予算との比較が簡単にできます。例えば、○○マンションは合計工数320時間で予算300時間を20時間超過、△△ビルは合計工数280時間で予算300時間に対して20時間余裕があるといった分析ができます。予算超過の案件については原因を調査して対策を検討し、次回見積もりに反映させることができます。
活用例2:職種別の稼働状況
ピボットテーブルで職種別に集計すると、電気工の1月工数が450時間、2月工数が520時間で70時間増加しているといった傾向が見えてきます。電気工の需要が高まっている場合は人員補強または外注を検討し、余裕のある職種については他案件への配置を検討できます。
活用例3:担当者別の負荷分析
担当者ごとの管理案件数と合計工数を分析すると、リソースの偏りが見えてきます。山田さんが3件で680人・時間と負荷が高く、佐藤さんが2件で420人・時間と適正、田中さんが1件で180人・時間と少ない場合、新規案件は佐藤さんか田中さんに配分するなど、バランスの取れた調整ができます。
活用例4:見積もり精度の向上
過去データから標準工数を算出できます。例えば、マンション配管工事(100㎡)の過去5件の平均が240人・時間だった場合、次回の同規模案件では240人・時間を基準に見積もりを作成できます。これにより見積もり精度が向上し、適正価格での受注と利益率の改善につながります。
導入時のポイント
ポイント1:入力ルールの統一
案件名の表記(略称禁止)、職種の分類(電気工、設備工等)、作業内容の分類、工数の単位(人・時間に統一)など、基本的な項目を統一しておくことが重要です。ルールが統一されていると、CSV出力後の集計が正確かつスムーズになります。
ポイント2:テンプレートの整備
導入前に、現在の集計フォーマットを確認し、必要な集計項目を洗い出します。そして、週報テンプレート、月報テンプレート、案件別原価管理シート、経営者向けサマリーなどのExcelテンプレートを作成し、CSVデータの貼り付け位置を決定しておきます。
ポイント3:段階的な移行
いきなり全部を変えるのではなく、徐々に慣れることが重要です。まずステップ1として日報をシステムに入力し始め、従来の集計方法は継続します。ステップ2としてCSV出力を開始し、Excelでの集計に慣れます。最後にステップ3として手作業の転記を廃止し、CSV→Excel集計に完全移行します。
まとめ
デジタル化で削減できる時間
項目 | 削減時間 |
|---|---|
転記作業 | 月4時間 |
データ整理 | 月2時間 |
集計作業 | 月1.3時間 |
レポート作成 | 月2.8時間 |
エラー修正 | 月1.3時間 |
合計 | 月11.5〜15時間 |
デジタル化のメリット
時間削減: 手作業による転記がゼロになり、CSV出力で集計が簡単になります。テンプレート活用により、継続的な効率化が実現します。
精度向上: 転記ミスや計算ミスが減り、データの整合性が保たれます。
データ活用: 過去データの検索が容易になり、分析がしやすくなります。経営判断にも活用できるようになります。
今日からできること
- 現在の集計作業にかかる時間を測定する
- どの作業がデジタル化で削減できるか洗い出す
- 日報のデジタル化を検討する
日報の集計作業は、毎週・毎月必ず発生する業務です。デジタル化とCSV出力の仕組みを整えれば、その後ずっと時間削減の恩恵を受けられます。
参考資料
本記事は、建設業における日報管理の実態調査および業務効率化の実証データをもとに作成しています。
- 国土交通省「建設業の働き方改革に関する調査」
- 一般社団法人日本建設業連合会「生産性向上事例集」
- 建設業における業務効率化に関するアンケート調査結果
- クラウドシステム導入企業へのヒアリング調査


