「必要な写真がどこにあるか分からない」「写真整理だけで毎週1時間以上かかる」――こうした悩みを抱える現場監督は少なくありません。
工事写真の管理は、建設現場で日々発生する重要な作業です。しかし、適切な管理方法が確立されていないと、写真の整理・検索に膨大な時間を取られ、本来の業務に支障をきたします。ある調査によると、現場監督の約7割が「写真管理に時間がかかりすぎている」と回答しており、業務負担の大きな要因となっています。
本記事では、工事写真の整理・管理を劇的に効率化する方法を、具体的な実践手順とともにご紹介します。
工事写真管理のよくある問題
まず、多くの現場で共通して発生している写真管理の問題を見ていきましょう。これらの問題を認識することが、効率化への第一歩となります。
問題1:写真を探すのに時間がかかる
最も多く聞かれる悩みが、「必要な写真がすぐに見つからない」というものです。
典型的な状況としては、スマホに数百枚の写真が混在しており、どの案件の写真なのか、いつ撮影したものなのかが分からなくなっています。複数の案件を並行して進めている現場監督の場合、スマホのカメラロールに異なる案件の写真が入り混じり、目的の写真を探すだけで5〜10分かかることも珍しくありません。
月に20回、写真を探す作業が発生すると仮定すると、1回10分として月間200分、つまり約3時間以上を写真探しだけに費やしている計算になります。年間では36時間以上、まる一週間分の労働時間に相当します。
問題2:整理に膨大な時間がかかる
写真を撮影した後の整理作業も、大きな負担となっています。
従来の整理方法は、次のような手順で行われることが一般的です。まず、スマホからPCに写真を転送します。USBケーブルで接続したり、メールで送信したりする作業です。次に、案件ごとのフォルダに振り分けます。「A現場」「B現場」といったフォルダを作り、該当する写真を移動させます。さらに、日付別にフォルダを作成して分類します。「2024年12月」「2024年11月」といった具合です。最後に、ファイル名を変更して分かりやすくします。
この一連の作業に、週1回で1〜2時間かかっているケースが多く見られます。月に4〜8時間、年間で48〜96時間を写真整理だけに使っている計算です。これは年間で1〜2週間分の労働時間に相当し、他の業務に充てられたはずの貴重な時間が失われています。
問題3:報告書作成時に二度手間
写真の整理が済んでいても、報告書作成時にさらに手間がかかります。
報告書作成の典型的な流れは次のようになります。まず、整理済みのフォルダから必要な写真を探します。複数のフォルダを開いて、「この工程の写真はどれだったかな」と探す作業です。次に、必要な写真を選びます。似たような写真が何枚もある中から、報告書に使う最適な1枚を選びます。そして、選んだ写真を報告書に貼り付けます。ExcelやWordに貼り付け、サイズを調整し、説明文を追加します。
この写真選定と貼り付けだけで、15〜20分かかることが一般的です。週に3回報告書を作成するとすれば、月に12回、年間で144回。写真関連の作業だけで年間36〜48時間を費やしている計算になります。
問題4:写真の紛失リスク
デジタルデータである写真は、適切に管理しないと簡単に失われてしまいます。
よくあるトラブルとして、スマホの故障で写真が消えてしまうケースがあります。落下や水没でスマホが壊れ、バックアップを取っていなかったため、重要な施工記録が失われるという事態です。また、PCのハードディスク故障も深刻な問題です。ある日突然PCが起動しなくなり、保存していた写真データが全て消失してしまいます。さらに、誤って削除してしまうケースもあります。整理中に間違えて重要な写真を削除し、ゴミ箱を空にしてしまった後で気づく、といった状況です。
これらのトラブルが発生すると、再撮影が必要になる場合もあります。しかし、既に施工が完了している箇所の写真は二度と撮れません。検査時に必要な写真がないという最悪の事態にもなりかねません。

効率化の4つのポイント
これらの問題を解決するには、写真管理の仕組み自体を見直す必要があります。効率化のポイントは5つあります。
ポイント1:撮影時に自動で整理される仕組み
最も効果的なのは、「撮影した瞬間に整理が完了している」という状態を作ることです。
理想的な流れは次のようになります。まず、撮影前に案件を選択します。「A現場」「B現場」といった案件リストから、今から撮影する案件を選びます。次に、写真を撮影します。通常のカメラと同じように撮影するだけです。そして、撮影した写真が自動的に案件別・日付別に整理されます。人間が手を動かすことなく、システムが自動的に適切なフォルダに振り分けてくれるのです。
これを実現する方法は、クラウド型の写真管理アプリを使うことです。撮影時に案件情報が自動的に付与され、アップロードと同時に自動分類される仕組みです。スマホで撮影した瞬間に、クラウド上の適切な場所に保存され、整理が完了します。
この仕組みを導入することで、週1〜2時間かかっていた整理作業が完全にゼロになります。年間で48〜96時間、つまり1〜2週間分の時間を他の業務に充てられるようになります。
ポイント2:クラウド保存で紛失リスクをゼロに
写真の紛失リスクを防ぐには、クラウド保存が最も確実です。
クラウド保存には3つの大きなメリットがあります。第一に、自動バックアップされることです。撮影した写真が自動的にクラウドに保存されるため、バックアップ作業を意識する必要がありません。第二に、スマホが故障しても安心なことです。写真はクラウド上に保存されているため、スマホを買い替えても、新しいスマホから同じ写真にアクセスできます。第三に、容量不足の心配が不要なことです。スマホの容量が足りなくなっても、クラウドは大容量のため、何千枚、何万枚でも保存できます。
セキュリティ面も重要です。信頼できるサービスを選ぶ際は、暗号化通信が行われているか、アクセス権限を細かく設定できるか、自動バックアップ機能があるかを確認しましょう。また、ISO27001などの情報セキュリティ認証を取得しているサービスであれば、より安心して利用できます。
クラウド保存により、写真紛失のリスクを実質的にゼロにできます。スマホの故障やPCのトラブルがあっても、重要な施工記録を守ることができます。
ポイント3:撮影時にコメント・注釈を追加
「この写真は何の写真だったか」と後から悩まないために、撮影時にコメントや注釈を追加する習慣が重要です。
撮影直後にできることとして、工程や部位の情報を記録します。「基礎工事」「1階柱」「外壁仕上げ」といった工程情報や、「東側」「A棟2階」といった場所情報を、写真に紐付けて保存します。また、特記事項があれば簡単なコメントを追加します。「配筋検査前」「クラック発見」「施主立会い」といったメモを残しておくことで、後から見返したときに状況が即座に分かります。
このメリットは大きく3つあります。第一に、後から見ても何の写真か分かることです。3ヶ月後、半年後に写真を見返したときでも、何を撮影したものか明確に分かります。第二に、報告書作成時の説明が簡単になることです。写真に紐付けられた情報をそのまま報告書に転記できます。第三に、検査時の資料として活用しやすいことです。検査官から「この部分の施工状況を見せてほしい」と言われたとき、すぐに該当する写真を提示できます。
撮影時にコメントを追加する習慣により、「この写真は何だっけ?」と悩む時間が完全になくなります。1回5分の悩む時間が月20回発生していたとすれば、月100分、年間1,200分(20時間)の削減になります。
ポイント4:日報・報告書との連携
写真を二重管理しないことも、効率化の重要なポイントです。
連携の仕組みとしては、次のような流れが理想的です。撮影した写真はその場でクラウドにアップロードされ、報告書作成時には必要な写真を選ぶだけで済みます。写真を別の場所にコピーしたり、改めて整理したりする必要がありません。また、ワンクリックで写真台帳を生成できる機能があれば、さらに効率的です。
日報や報告書と写真が連携していることで、写真の二重管理が不要になります。「日報用の写真」と「報告書用の写真」を別々に管理する必要がなく、一元管理された写真を様々な用途に使い回せます。
具体的な実践方法
効率化のポイントが分かったところで、具体的にどう実践するかを見ていきましょう。
方法1:スマホアプリで現場撮影から管理まで完結
最も効率的なのは、スマホアプリを使って撮影から管理まで全てを完結させる方法です。
基本的な流れは次のようになります。
撮影前の準備
アプリを起動し、案件を選択します。「A現場」「B現場」といったリストから、これから撮影する案件をタップします。必要に応じて工程も選択します。「基礎工事」「躯体工事」「仕上げ工事」といった選択肢から該当するものを選びます。
撮影時の操作
カメラで撮影します。通常のスマホカメラと同じ感覚で撮影できます。撮影した写真は自動的にクラウドにアップロードされます。Wi-Fi環境下であれば数秒、4G/5G環境でも数十秒でアップロード完了します。そして、写真は案件・日付・工程で自動分類されます。人間が何もしなくても、適切な場所に整理されます。
撮影後の補足作業
必要に応じてコメントを追加します。音声入力も使えるため、「配筋検査前」「クラック発見」といったメモを数秒で入力できます。また、写真上に矢印や丸印などの注釈を追加することも可能です。「ここにクラックあり」といった視覚的な説明を加えられます。追加が終わったら、そのまま次の撮影に移ります。
このメリットは大きく3つあります。撮影から保存まで30秒程度で完了すること、整理作業が完全にゼロになること、そしてPCを開く必要がないことです。現場にいながら、すべての作業が完結します。

方法2:写真台帳の自動生成
報告書や検査資料として写真台帳を作成する作業も、大幅に効率化できます。
従来の方法では、次のような手順が必要でした。まず、フォルダから写真を選びます。複数のフォルダを開いて、必要な写真を探し出す作業に約15分かかります。次に、Excelに写真を貼り付けます。1枚ずつ貼り付け、サイズを調整する作業に約20分かかります。そして、説明文を追加します。各写真に対して「工程」「部位」「日付」「コメント」を入力する作業に約15分かかります。合計で50分程度の作業時間です。
一方、自動生成機能を使えば、次のようになります。台帳の種類(形式)を選択し、含めたい写真を選択するだけです。合計2分程度で完了します。
自動生成される台帳の内容は、工程・部位で分類され、撮影時に追加したコメントが自動的に挿入され、PDF形式で出力されます。そのまま印刷したり、メールで送信したりできます。
週に1回写真台帳を作成するとすれば、従来50分かかっていた作業が2分になることで、週48分、月192分(約3時間)、年間で約36時間の削減になります。
方法3:ビフォーアフター写真の管理
施工前後の比較写真は、施主への説明や検査資料として重要ですが、管理が煩雑になりがちです。
ペア管理の方法として、次のような流れが効果的です。まず、施工前写真を撮影し、「ビフォー写真」としてマークします。次に、施工後に同じ場所を撮影すると、システムが自動的にペアリングしてくれます。これにより、施工前後の写真が常にセットで管理されます。
活用場面は多岐にわたります。施主への報告で「ここがこう変わりました」と視覚的に説明できます。改修工事の記録として、施工前の状態を正確に残せます。検査資料として、適切な施工が行われたことを証明できます。
ペア管理により、ビフォーアフター写真を探す手間が完全にゼロになります。関連する写真が自動的に紐付けられているため、探す必要がないのです。
写真整理のルール設定
デジタルツールを導入するだけでなく、運用ルールを明確にすることも重要です。
ルール1:撮影基準を明確にする
何を撮影し、何を撮影しないかを明確にすることで、無駄な写真を減らせます。
撮影すべき写真は4種類あります。施工前の状況(元々どうだったかの記録)、施工中の重要工程(検査で必要となる施工状況)、完成状態(最終的な仕上がり)、そしてトラブル・変更箇所(通常と異なる対応をした箇所)です。
一方、撮影不要な写真もあります。似たような写真の重複(同じ箇所を何枚も撮る必要はない)、ピンボケ写真(後で使えないため撮り直すべき)、説明不要な雑多な写真(業務と関係ない写真)です。
撮影基準を明確にすることで、撮影枚数が適正化され、後の整理作業も楽になります。必要な写真だけが残るため、探す際の効率も上がります。
ルール2:命名規則を統一
ファイル名に一定のルールを設けることで、検索性が向上します。
推奨される命名規則の例としては、「日付_案件名_工程_場所.jpg」という形式があります。たとえば、「20241218_A現場_基礎_東側.jpg」といった具合です。
命名規則を統一するメリットは3つあります。第一に、誰が見ても分かることです。ファイル名を見ただけで、いつ、どこで、何を撮影した写真かが分かります。第二に、検索しやすいことです。ファイル名に含まれるキーワードで検索できます。第三に、並び替えが容易なことです。日付順、案件順など、様々な方法で並び替えられます。
ルール3:定期的な整理タイミングを決める
写真整理を後回しにせず、決まったタイミングで行うことが重要です。
推奨されるタイミングは3つあります。撮影直後には、自動整理に任せます。人間が手を動かす必要はありません。週末には、不要な写真を削除します。ピンボケや重複した写真を整理します。工程完了時には、写真台帳を作成します。その工程で撮影した写真をまとめて台帳化し、記録として保管します。
やってはいけないこととして、数週間分をまとめて整理すること、案件終了後に一括整理すること、整理を先延ばしにすることが挙げられます。これらは結局、膨大な時間を消費する原因となります。
まとめ
工事写真管理の効率化は、日々の業務負担を大きく軽減し、より重要な業務に時間を使えるようにする効果があります。
期待できる効果
時間削減の効果は大きく3つの領域で現れます。
整理作業は、週1〜2時間かかっていたものが完全にゼロになります。年間で48〜96時間、つまり1〜2週間分の労働時間に相当します。
写真探しは、1回10分かかっていたものが30秒以内になります。月20回探すとして、月間で約3時間、年間で約36時間の削減です。
写真台帳作成は、1回50分かかっていたものが2分になります。週1回作成するとして、週48分、年間で約40時間の削減です。
これらを合計すると、月間で約10〜15時間、年間で約120〜180時間の削減が見込めます。これは年間で3〜4週間分の労働時間に相当し、その時間を本来の現場管理業務や品質向上の取り組みに充てられるようになります。
今日からできること
大がかりなシステム導入を決断する前に、まずは小さく始めることができます。
第一に、スマホの写真を案件別に整理してみることです。現在カメラロールに混在している写真を、案件ごとのフォルダに分けるだけでも、探しやすさが向上します。
第二に、写真管理アプリを試してみることです。多くのツールが無料トライアル期間を設けています。実際に使ってみて、自社の業務に合うかを確認できます。
第三に、撮影時のルールを決めることです。「どの工程で何を撮影するか」「ファイル名はどうするか」といった基本的なルールを決めるだけでも、効率は向上します。
工事写真の管理は、毎日発生する業務だからこそ、効率化の効果が大きく現れます。1回の撮影で数分の短縮でも、年間では数十時間の削減につながります。まずは小さく始めて、徐々に仕組みを整えていきましょう。
建設業界全体で人手不足が深刻化する中、限られた人材で成果を出すには、一人ひとりの業務効率を高めることが不可欠です。写真管理の効率化は、その実現手段の一つです。削減できた時間を、より付加価値の高い業務に振り向けることで、現場の生産性向上と働き方改革の両立が可能になります。
【引用元・参考資料】
国土交通省
・「建設現場の生産性向上に関する調査」
・「i-Construction推進コンソーシアム」
https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/
一般社団法人日本建設業連合会
・「ICT活用による生産性向上の取り組み」
本記事は現場Hub編集部が、現場監督へのヒアリング、業界動向の調査、および上記資料をもとに作成しました。

.png)
