現場と事務所の情報共有をスムーズにする方法
業務効率化

現場と事務所の情報共有をスムーズにする方法

約10分で読める

「現場から電話しても事務所の人が出ない」「伝えたはずの情報が伝わっていない」

建設業では、現場と事務所の間で常に情報のやり取りが発生します。しかし、電話・FAX・メールといった従来の方法では、情報の行き違いや伝達漏れが頻繁に発生します。本記事では、現場と事務所の情報共有をスムーズにする具体的な方法を解説します。

現場と事務所の情報共有における課題

電話がつながらない問題

現場から事務所に電話をかけても担当者が不在で、伝言を頼んだものの結局伝わらず、折り返しの電話を受けようとしたときには今度は現場が作業中で出られない――このような状況は建設業の現場で日常的に発生しています。

この問題により、緊急の連絡が遅れたり、何度も電話をかけ直す時間が無駄になったり、最悪の場合には重要な情報が抜け落ちてしまうこともあります。特に複数の現場を抱える会社では、電話での連絡調整だけで1日の大半が費やされるケースも少なくありません。

「言った・言わない」のトラブル

電話での口頭連絡は記録が残らないため、「伝えたはずなのに聞いていないと言われる」「指示内容が正確に伝わっていない」といったトラブルの原因になります。こうした問題は、単なるコミュニケーションの齟齬にとどまらず、責任の所在が不明確になり、信頼関係の悪化にもつながります。

情報の一方通行と遅延

従来の方法では、現場から事務所への日報はFAXやメールで送信し、事務所から現場への指示は電話で行うといった具合に、情報のやり取りが一方通行になりがちです。この方式では、リアルタイムでの双方向コミュニケーションができず、状況に応じた迅速な対応が困難になります。

最新情報の不一致による手戻り

図面の変更があったにもかかわらず現場に伝わっておらず、古い図面で作業を進めてしまう。施主からの変更依頼が現場に届いていない。このような情報の不一致は、手戻りややり直しを発生させ、コスト増加と工期遅延の原因となります。

スムーズな情報共有を実現する4つの方法

1. チャットツールでリアルタイムコミュニケーション

チャットツールを導入することで、電話がつながらない問題や「言った・言わない」のトラブルを大幅に削減できます。メッセージを送信すればすぐに相手に届き、既読マークで確認状況も把握できます。緊急度に応じて通知設定を変更することで、重要な連絡を見逃すリスクも軽減されます。

最大の利点は履歴が残ることです。後から「いつ誰が何を伝えたか」を確認でき、検索機能で過去の会話も簡単に探せます。案件ごとにグループチャットを作成すれば、関係者全員に情報を一斉共有でき、伝達漏れを防止できます。

実際の使用例として、現場監督が「資材搬入、予定より1時間遅れます。10時到着予定→11時到着予定」とメッセージを送れば、事務所は「了解です。協力会社にも連絡しておきます」と即座に返信し、現場監督は絵文字のリアクションで確認完了を示すことができます。このやり取りは数秒で完了し、全てが記録として残ります。

2. クラウドでの資料共有

クラウドストレージを活用すれば、図面や資料をオンライン上に保存し、現場・事務所のどこからでもアクセスできるようになります。更新があれば自動的に最新版に反映されるため、古い図面で作業してしまうミスがなくなります。

スマートフォン・タブレット・PCのどのデバイスからでも閲覧可能なため、現場で図面を確認したり、移動中に資料をチェックしたりすることができます。バージョン管理機能により、過去の版も保存されており、「前の図面を見たい」という要望にも対応できます。変更履歴が残るため、いつ誰が何を変更したかも明確です。

3. 日報のクラウド共有

従来の方法では、現場での作業が終わってから事務所に戻り、FAXやメールで日報を送信していました。この場合、事務所が内容を確認できるのは翌日になることも多く、問題が発見されても対応が遅れてしまいます。

クラウド型の日報システムでは、現場がスマートフォンで入力した瞬間にクラウドに保存され、事務所がリアルタイムで確認できます。事務所は現場の状況を即座に把握でき、問題があればすぐに対応できます。また、紙の日報を後からPCに入力し直すといった二重作業もなくなります。

検索機能により、「先月のあの現場の日報を確認したい」という場合も、紙の束から探す必要がなく、瞬時に該当するデータを見つけられます。

4. 写真・動画での状況共有

文章では説明しにくい現場の状況も、写真や動画を使えば一目瞭然です。配管ルートの問題や、想定外の障害物、水漏れの状況など、視覚的な情報は文章よりもはるかに正確に状況を伝えられます。

例えば、現場監督が「配管ルートで問題が発生しました」とチャットで報告し、現場の写真を添付して「この梁が想定外の位置にあります。ルート変更の検討をお願いします」と送信すれば、設計担当者は写真を確認後、「代替ルートの図面を30分後に送ります」と即座に対応できます。

このやり取りは、従来であれば電話で説明を試み、お互いに理解できずに現地確認が必要になるところを、写真1枚で解決できます。動画機能を使えば、動きのある状況や作業手順の確認もより詳細に行えます。

情報共有ルールの設定

連絡手段の使い分け

デジタルツールを導入しても、全ての連絡を同じ方法で行うのは効率的ではありません。緊急度に応じた使い分けが重要です。

事故や災害など超緊急の場合は、従来通り電話が最適です。即座の対応が必要な緊急案件は、チャットに加えて電話でも連絡します。当日中の対応が必要な通常の連絡はチャットで行い、翌日以降で構わない記録や報告は日報やメールで対応します。

このルールを全員で共有し徹底することで、「どの方法で連絡すべきか」の迷いがなくなり、適切なタイミングで適切な手段での連絡が実現します。

返信期限の設定

「いつまでに返信すべきか」が明確でないと、連絡を受けた側も優先順位をつけにくく、送信した側も不安になります。緊急連絡は30分以内、通常連絡は3時間以内、確認依頼は当日中、報告や共有は既読確認のみといった目安を設定することで、返信漏れを防止し、安心して連絡できる環境が整います。

情報の保存場所を統一

図面はメール添付、写真はLINE、日報はFAXとバラバラに管理していると、「どこに何があるか分からない」状態になります。全ての情報をクラウドに一元化し、案件ごとにフォルダを整理することで、検索ですぐに必要な情報を見つけられます。

情報を探す時間がゼロになり、最新版が明確で、新人でもすぐに使えるようになります。

定期的な同期タイミング

朝には今日の作業予定を共有し、注意事項を確認します。夕方には今日の実績を報告し、明日の準備を確認します。週次では週報を共有し、進捗会議を行います。こうした定期的な同期により、情報の行き違いを未然に防ぎます。

デジタルツール導入のステップ

ステップ1:現状の問題を洗い出す

まず、自社の現状を客観的に把握することが重要です。電話がつながらないことが多いか、情報の伝達漏れが発生しているか、古い図面で作業してしまうことがあるか、現場の状況が事務所から見えないかといった項目をチェックします。該当する項目が多いほど、デジタル化の効果は大きくなります。

ステップ2:ツールを選ぶ

ツール選定では、ITに不慣れな社員でも使える使いやすさ、直感的な操作性が最重要です。機能面では、チャット機能、ファイル共有、日報機能、検索機能が揃っていることを確認します。

ステップ3:トライアルで試す

実際に導入する前に、2〜4週間のトライアル期間を設けることをお勧めします。現場でスマートフォンから使いやすいか、事務所でPCから使いやすいか、ファイルの共有はスムーズか、検索機能は十分かといったポイントを確認します。

ステップ4:ルールを決めて運用開始

連絡手段の使い分け、返信期限、保存場所、運用時間といったルールを決めてから運用を開始します。いきなり全案件に導入するのではなく、1つの案件で試験運用し、問題なければ全案件に展開します。並行運用期間を設けることで、スムーズな移行が可能になります。

導入時の注意点

全員が使えるまで支援する

デジタルツールの導入では、ITに不慣れな社員への配慮が欠かせません。初回研修の実施、マニュアルの作成、サポート担当者の配置、質問しやすい環境づくりが重要です。「分からない」と言いやすい雰囲気をつくることで、全員が安心して使えるようになります。

従来の方法も併用する

最初の1〜2ヶ月は従来の方法とデジタルツールを併用し、徐々にデジタルに移行していきます。無理に強制すると、かえって反発を招き、定着しません。並行運用期間を設けることで、社員の不安を軽減し、スムーズな移行が実現します。

定期的に見直す

導入1ヶ月後、3ヶ月後、以降は半年ごとに見直しを行います。使いにくい点はないか、ルールは適切か、改善要望はないかを収集し、継続的に改善していくことで、ツールが定着し、効果が最大化されます。

まとめ

現場と事務所の情報共有をスムーズにする4つの方法は、チャットツールによるリアルタイムコミュニケーション、クラウド共有による最新情報の一元管理、日報のクラウド化による即座の共有、そして写真・動画による視覚的な情報伝達です。

これらの方法を導入することで、電話のかけ直しに費やす月10時間、情報を探す時間の月5時間、報告作業の二重化による月8時間を削減できます。情報の行き違いや古い図面での作業はゼロになり、伝達漏れも大幅に減少します。

まずは現場と事務所の情報共有の問題を洗い出し、チャットツールを試してみることから始めましょう。クラウドストレージに資料を保存してみるだけでも、効果を実感できるはずです。情報共有のデジタル化は、業務効率化の要です。小さく始めて、徐々に範囲を広げていきましょう。

【参考文献・出典】

国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk2_000099.html

国土交通省「建設現場の生産性向上」 https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000033.html

総務省「令和5年版情報通信白書」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/

経済産業省「デジタルガバナンス・コード」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/dx-guide.pdf

この記事をシェア