建設業の人手不足問題と5つの解決策
「求人を出しても応募がない」「ベテランが次々と引退し、若手が育たない」「現場監督の負担が増え続けている」
建設業・設備工事業における人手不足は、もはや一企業の問題ではなく、業界全体の深刻な課題となっています。本記事では、建設業の人手不足の実態と、中小企業でも取り組める5つの具体的な解決策を解説します。
建設業の人手不足の実態
深刻化する人手不足
建設業の就業者数は2025年時点で約479万人と、ピーク時の1997年から約210万人も減少しています。さらに深刻なのは年齢構成の偏りです。55歳以上が約36%を占める一方で、29歳以下はわずか約11%にとどまり、平均年齢は47.7歳と全産業平均より約4歳も高くなっています。
国土交通省の試算によれば、2030年には約93万人の労働者不足が見込まれています。高齢化による大量離職が加速する中、若年層の入職者数は低迷しており、業界全体が危機的な状況に直面しています。
人手不足が引き起こす問題
人手不足は企業経営に深刻な影響を及ぼしています。まず、受注機会の損失です。人員不足により案件を断らざるを得ず、売上機会を逸失するだけでなく、顧客との関係悪化にもつながります。
次に、既存社員への負担増が挙げられます。1人あたりの業務量が増加し、長時間労働が常態化することで、休暇取得も困難になっています。この状況が続けば、さらなる離職を招く悪循環に陥りかねません。
また、技術継承の断絶も深刻です。ベテランのノウハウが若手に継承されず、育成機会も不足することで、工事品質への影響が懸念されます。最終的には、後継者不足による廃業や事業規模の縮小など、事業継続リスクにも直結します。

なぜ建設業は人手不足なのか
原因1:業界イメージの問題
建設業は依然として「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根強く残っています。このイメージが若年層の敬遠や親世代の反対を招き、学生の就職先候補から外れる要因となっています。加えて、長時間労働や休日が少ないという認識、天候に左右される不安定さへの懸念も、人材確保の障壁となっています。
原因2:賃金水準と待遇
建設業の平均年収は約509万円と、全産業平均の約443万円を66万円上回っています。しかし、年間労働時間は約2,000時間と全産業平均より200時間も長く、週休二日制の実施率は約30%にとどまり、全産業平均の約80%を大きく下回っています。
項目 | 建設業 | 全産業平均 | 差 |
|---|---|---|---|
平均年収 | 約509万円 | 約443万円 | +66万円 |
年間労働時間 | 約2,000時間 | 約1,800時間 | +200時間 |
週休二日実施率 | 約30% | 約80% | -50% |
年収は高いものの、労働時間の長さを考慮すると、必ずしも魅力的な待遇とは言えません。週休2日が実現できておらず、残業前提の働き方が常態化していることが、若手の定着を阻んでいます。
原因3:キャリアパスの不明確さ
若手が建設業への就職をためらう理由の一つに、将来のキャリアが見えにくいことがあります。スキルアップの機会や評価基準が曖昧で、長く続けられる仕事なのか不安を感じる若者が少なくありません。明確なキャリアパスの提示が求められています。
原因4:デジタル化の遅れ
建設業では依然として紙とExcelが中心の業務フローが残っており、ITツールの活用が他産業に比べて遅れています。非効率な業務フローが残存していることは、デジタルネイティブな若年層が求める職場環境との乖離を生んでいます。
人手不足への5つの解決策
解決策1:業務効率化による既存人材の活用
デジタルツールを導入することで、限られた人材をより効果的に活用できます。例えば、写真整理は従来30分かかっていた作業が5分に、日報作成は20分が10分に、報告書作成は60分が20分に、連絡調整は90分が30分に短縮できます。これにより、月間で約40〜50時間の削減が可能です。
業務 | 従来の時間 | 効率化後 | 削減時間 |
|---|---|---|---|
写真整理 | 30分/日 | 5分/日 | 25分 |
日報作成 | 20分/日 | 10分/日 | 10分 |
報告書作成 | 60分/件 | 20分/件 | 40分 |
連絡調整 | 90分/日 | 30分/日 | 60分 |
クラウド型案件管理システムや写真管理アプリ、チャットツールでの情報共有、日報・報告書の自動生成などを導入することで、既存人員で対応できる案件数が増加し、残業時間の削減にもつながります。月5万円程度のシステム費用で月40時間(時給2,000円で8万円相当)を削減できれば、実質的に0.25人分の労働力を確保したのと同じ効果が得られます。
解決策2:働き方改革による魅力ある職場づくり
週休2日制の実現は、建設業の魅力向上に不可欠です。いきなり完全週休2日制を目指すのではなく、段階的なアプローチが現実的です。まず4週6休から始め、月1回の土曜休みを実施しながら現場の理解を得ます。次に4週8休へ移行し、隔週での土曜休みを実現します。最終的に、業務効率化とセットで完全週休2日制を目指します。
これには業務の平準化、工期交渉の強化、協力会社との連携強化、デジタル化による時短が必要です。週休2日制の実現により、求人応募者の増加、離職率の低下、社員満足度の向上が期待できます。
残業時間の削減も重要な課題です。月80時間から月45時間以下への削減を目標に、業務のデジタル化、間接業務の効率化、会議時間の短縮、移動時間の削減に取り組むことで、2024年問題への対応も実現できます。
解決策3:若手採用の強化と育成体制の構築
採用活動を見直し、若手にアピールする取り組みが必要です。InstagramやX(旧Twitter)などのSNSを活用し、現場の様子や社員の声を投稿することで、リアルな職場環境を伝えられます。オンライン説明会の実施や職場見学会の開催、先輩社員との座談会なども効果的です。求人内容には具体的な働き方やキャリアパス、福利厚生を詳しく記載し、写真や動画を活用しましょう。
採用と同時に、育成体制の整備も不可欠です。段階的な研修計画を立て、OJT担当者を明確化し、定期的なフォローアップと資格取得支援制度を設けます。メンター制度を導入し、先輩社員によるサポート体制を構築することで、若手の定着率が向上します。さらに、達成目標の設定や定期的な評価面談、昇給・昇格基準の明示により、評価制度を明確化することが重要です。
解決策4:外国人材・女性の活用
外国人技能実習生や特定技能制度を活用することで、人手不足の即効性のある解決が期待できます。比較的長期での雇用が可能で、真面目で勤勉な人材が多いというメリットがあります。受け入れには、適切な監理団体の選定、住居の確保、日本語教育の支援、生活サポート体制の整備が必要です。受け入れコストの把握や文化・習慣の違いへの配慮、コミュニケーション体制の整備にも注意が必要です。
女性の活躍推進も重要な施策です。トイレ・更衣室の設置、作業服のサイズ展開、重量物運搬の補助機器導入など、受け入れ環境を整備します。現場管理・監督業務、CADオペレーター、事務・営業サポート、ドローンオペレーターなど、職域を拡大することで、女性が活躍できる場を増やします。育児休業の取得促進、短時間勤務制度、在宅勤務の導入、保育施設の情報提供など、両立支援制度も充実させましょう。これにより、多様な人材の確保、職場環境の改善、企業イメージの向上が実現できます。

解決策5:協力会社との連携強化とアウトソーシング活用
自社だけで全ての業務を抱え込むのではなく、協力会社との連携を強化し、アウトソーシングを戦略的に活用することで、人手不足を補うことができます。図面作成や積算業務をCAD専門会社に委託したり、安全管理を専門コンサルタントに依頼したりすることで、自社社員の負担を軽減し、コア業務に集中できます。経理や給与計算などのバックオフィス業務を外部委託することで、現場管理に人材を集中させることも効果的です。
協力会社との関係強化も重要です。長期的なパートナーシップを構築し、定期的な情報交換会や技術研修の共同実施を通じて信頼関係を深めましょう。公正な取引条件の設定や適正な工期の確保、早期の支払いなど、協力会社が働きやすい環境を整えることで、優先的に人員を回してもらえる関係を築けます。
作業手順をマニュアル化し、業務を標準化することで、協力会社との分業体制もスムーズになります。この取り組みにより、自社の人員不足を補いながら、専門性の高いサービスを顧客に提供でき、繁閑に応じた柔軟な体制構築が可能になります。
実践のためのロードマップ
短期施策(3ヶ月以内)
すぐに始められることから着手しましょう。業務効率化では、現状の業務時間を測定し、無駄な作業を洗い出し、デジタルツールの検討・導入を進めます。採用活動では、求人内容を見直し、会社紹介資料を作成します。
中期施策(6ヶ月以内)
体制づくりに取り組みます。働き方改革として、週休2日制の段階的導入、残業時間削減計画の策定、業務の標準化・マニュアル化を進めます。育成体制では、研修プログラムの策定、メンター制度の導入、評価制度の明確化に着手します。ツール導入では、クラウドシステムの本格運用を開始し、効果測定と改善を行いながら全社展開を目指します。
長期施策(1年以内)
持続可能な体制を確立します。組織体制として、評価・昇進制度の運用、キャリアパスの明確化、経営理念の浸透を図ります。ブランディングでは、採用ブランドの確立、地域での認知度向上、業界での評価向上を目指します。効率化による受注拡大、新規事業への展開を通じて、持続可能な成長を実現します。
まとめ
建設業の人手不足は深刻ですが、適切な対策を講じることで解決可能な課題です。本記事で紹介した5つの解決策—業務効率化による既存人材の活用、働き方改革による魅力ある職場づくり、若手採用の強化と育成体制の構築、外国人材・女性の活用—を、自社の状況に合わせて実践していくことが重要です。
重要なのは「できることから始める」ことです。すべてを一度に実現する必要はありません。まずは現状を把握し、優先課題を決め、小さく始めてください。効果を測定しながらPDCAサイクルを回し、改善を継続していくことが成功への道です。
人手不足への対応は、一時的な対症療法ではなく、企業の持続可能な成長につながる投資です。今日から、できることから始めましょう。
参考資料・データ引用元
- 国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」
- 国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
- 総務省「労働力調査」
- 国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」

