クラウドシステム導入の失敗例と対策
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クラウドシステム導入の失敗例と対策

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クラウドシステム導入の失敗例と対策

建設業界でもクラウドシステムの導入が進んでいますが、「導入したものの使われていない」「かえって手間が増えた」という声も少なくありません。本記事では、クラウドシステム導入でよくある失敗例と、その対策を詳しく解説します。

失敗例1:現場が使わない「机上の空論システム」

失敗の要因

最も多い失敗パターンが、経営層や事務部門が決めたシステムを現場が使わないケースです。現場の声を聞かずに導入を決定し、ITツールに慣れていない現場監督への配慮が不足していることが原因です。また、導入目的が現場に伝わっておらず、操作が複雑すぎることも定着を妨げます。

典型的な経過

経営層や事務部門が機能豊富なシステムを選定し、契約・導入します。しかし現場監督は使い方がわからず、入力されないためデータが蓄積されません。結局、紙とExcelでの運用に戻ってしまいます。

実際の声:「50代の現場監督にITツールをいきなり使わせるのは難しい。スマホも最近持ったばかりの人が多い」(設備工事会社・事務員)

失敗例2:機能が多すぎて使いこなせない

失敗の要因

「高機能=良いシステム」という誤解から、自社の業務に必要な機能を整理せずに導入してしまうケースです。設定・カスタマイズに時間がかかりすぎ、従業員の習熟にも時間がかかります。

典型的な経過

100以上の機能を持つシステムを導入したものの、どの機能を使えばいいのかわかりません。設定項目が多すぎて意味が理解できず、マニュアルも分厚くて読む気になれない状態に。結局、基本機能すら使えない状態に陥ります。

教訓: 「全部入り」より「必要な機能がシンプルに使える」方が重要です。

失敗例3:既存の業務フローを無視した導入

失敗の要因

現場の業務フローを理解せずに導入し、急激な変化を求めすぎることが失敗につながります。「誰が」「どのタイミングで」入力するかが未定義で、移行期の運用ルールが曖昧なままスタートしてしまいます。

典型的な経過

従来は現場監督が手書き日報を提出し、事務員がExcelに入力していました。システム導入後、現場監督にスマホ入力を求めましたが、慣れない操作に抵抗感を持たれます。結局、紙で書いてから事務員がシステムに入力する二重作業が発生し、かえって手間が増えてしまいます。

正しいアプローチ: 既存の業務フローに寄り添い、段階的に移行することが重要です。

失敗例4:導入後のサポート不足

失敗の要因

初期設定だけで導入完了と考え、継続的な教育・フォローがないケースです。困ったときに相談できる体制がなく、サポート対応が遅い、または不親切であることも定着を妨げます。

典型的な経過

初期設定完了後、サポートがほとんどありません。1ヶ月後に「この機能、どう使うのか」と疑問が出てもマニュアルを読んでも理解できず、サポートに電話しても「マニュアルに記載されています」という対応。結局、使わなくなります。

必要なサポート: 定期的な活用支援、すぐに相談できる窓口、業務に合わせた使い方の提案が不可欠です。

失敗例5:費用対効果が見えない

失敗の要因

導入前に効果指標を設定しておらず、「何時間削減できたか」を測定していません。現場の実感として効果を感じられず、経営層にも効果が報告されない状態が続きます。

典型的な経過

年間120万円のシステムを導入し、「業務効率化で元が取れる」という説明でしたが、1年後に「どれだけ効果が出たのか」を確認すると誰も答えられません。費用対効果が見えないため、更新を見送ることになります。

必要な視点: 導入前に「何を改善したいか」「どう測定するか」を明確にすることが重要です。

失敗しないための対策

対策1:現場の声を聞いて導入を決める

システム導入を成功させるには、現場を巻き込んだプロセスが不可欠です。まず、現場監督や事務員に「どんな作業に時間がかかっているか」「何が一番面倒か」「どんなツールなら使えそうか」をヒアリングします。

次に、現場の声を整理して優先度を設定します。全員が困っている課題から着手し、毎日発生する業務を重視しましょう。そして、デモ画面を現場に見せて、使えそうかを確認してから決定します。現場からOKが出たシステムを選ぶことで、導入後の定着率が高まります。

対策2:シンプルで使いやすいシステムを選ぶ

システム選定では、高機能よりも使いやすさを優先することが重要です。以下の基準でシステムを評価しましょう。

直感的な操作性:

  • マニュアルを読まなくても使える
  • スマホアプリが使いやすい
  • 3ステップ以内で操作完了

建設業特化の機能:

  • 業界用語がそのまま使える
  • 現場の業務フローに合っている
  • 無駄な機能がない

段階的に機能を使える:

  • 最初は基本機能だけ
  • 慣れたら追加機能を活用
  • 全機能を一度に使わなくていい

選定時は、無料トライアルで実際に触ってみて、現場監督(ITが苦手な人)が使えるか確認しましょう。導入企業の評判やサポート体制が充実しているかも重要なチェックポイントです。

対策3:段階的に導入する

一気に全面導入するのではなく、段階的に進めることが成功の鍵です。

フェーズ1(1ヶ月目):小さく始める 1〜2案件だけシステムを使い、1つの機能(例:写真管理)だけを使います。紙との併用もOKで、慣れることを最優先にします。

フェーズ2(2〜3ヶ月目):範囲を広げる 案件数を増やし、機能を追加(例:日報機能も使う)します。紙をなくす準備を始め、効果を実感し始めます。

フェーズ3(4ヶ月目〜):全面展開 全案件でシステムを使い、紙を完全に廃止します。全機能を活用しながら、継続的に改善していきます。

ポイント: 「一気に全部」ではなく「少しずつ確実に」進めることが重要です。

対策4:充実したサポート体制を確保する

継続的なサポート体制が、システム定着の鍵となります。導入時には初期設定の支援、現場での操作説明会、業務フローに合わせたカスタマイズ提案が必要です。運用中は定期的な訪問・面談、電話・メール・チャットでの質問対応、活用度の確認と改善提案が求められます。

さらに、継続サポートとして新機能の案内、他社の活用事例の共有、より効果的な使い方の提案があると理想的です。

サポート体制のチェックポイント:

  • 専任の担当者がついてくれるか
  • 電話・メール・チャットで相談できるか
  • 返信が早いか(24時間以内)
  • 建設業の知識があるか
  • 定期的なフォローアップがあるか

対策5:効果測定の仕組みを作る

導入効果を可視化することで、継続的な改善と経営判断が可能になります。

時間削減の測定例:

項目

導入前

導入後

削減効果

写真整理

30分/1日

5分/1日

25分/1日

日報整理

20分/1日

10分/1日

10分/1日

合計

50分/1日

15分/1日

35分/1日

月間削減時間:約12時間

コスト削減の測定:

  • システム費用:月5万円
  • 削減時間:月12時間
  • 時給2,000円で計算:12時間 × 2,000円 = 24,000円
  • 費用対効果:導入3ヶ月目以降で回収見込み

定性的な効果(情報が探しやすくなった、ミスが減った、残業が減った、社員の満足度が上がったなど)も記録しましょう。月次レポートを作成し、経営者への定期報告と現場への効果フィードバックを行うことが重要です。

システム選定時の重要なチェックリスト

機能面のチェック項目

基本機能:

  • 案件管理
  • スケジュール管理
  • 写真管理
  • 日報・報告書作成
  • 見積・請求管理

使いやすさ:

  • スマホ・タブレット対応
  • オフライン機能
  • 検索機能の充実
  • データ出力(CSV、PDF等)

拡張性:

  • 必要に応じて機能追加可能
  • 他システムとの連携
  • カスタマイズの柔軟性

サポート面のチェック項目

導入サポート:

  • 初期設定支援の有無
  • 操作研修の実施
  • データ移行支援

運用サポート:

  • 問い合わせ対応時間
  • 対応チャネル(電話、メール、チャット)
  • 訪問サポートの有無
  • マニュアル・動画の充実度

継続サポート:

  • 定期的なフォローアップ
  • アップデート頻度
  • ユーザーコミュニティの有無

コスト面のチェック項目

初期費用:

  • 導入費用
  • 設定費用
  • 研修費用

月額費用:

  • 基本料金
  • ユーザー数による従量課金
  • オプション機能の費用

その他費用:

  • データ容量制限と追加費用
  • サポート費用
  • 解約時の費用

まとめ

よくある失敗パターン

  1. 現場が使わない「机上の空論システム」
  2. 機能が多すぎて使いこなせない
  3. 既存の業務フローを無視した導入
  4. 導入後のサポート不足
  5. 費用対効果が見えない

成功するための対策

  1. 現場の声を聞いて導入を決める
  2. シンプルで使いやすいシステムを選ぶ
  3. 段階的に導入する
  4. 充実したサポート体制を確保する
  5. 効果測定の仕組みを作る

クラウドシステム導入成功の鍵

クラウドシステムの導入は、単なる「ツール選び」ではありません。現場の理解と納得を得ながら、トップダウンではなく現場を巻き込んだ検討を行い、導入目的を明確化して共有することが重要です。段階的な移行により負担を軽減し、高機能より使いやすさを優先した建設業特化型のシステムを選びましょう。

導入後は継続的なサポート体制を確保し、定期的な活用度チェックと改善提案の受け入れを行います。具体的な指標を設定して定期的に効果測定を行い、経営層・現場への報告を欠かさないことが成功への道です。

これらを意識して進めることで、クラウドシステム導入は必ず成功します。焦らず、着実に、現場と一緒に進めていくことが最も重要です。


参考資料

本記事は、建設業界におけるクラウドシステム導入の実態調査および導入企業へのインタビューをもとに作成しています。

  • 国土交通省「建設業のデジタル化推進に関する調査」
  • 一般社団法人日本建設業連合会「ICT活用事例集」
  • 各種クラウドシステムベンダー提供資料
  • 建設業界ユーザーへのヒアリング調査結果

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