建設業DXとは?基礎から始める完全ガイド
DX推進

建設業DXとは?基礎から始める完全ガイド

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建設業DXとは?基礎から始める完全ガイド

DX(デジタルトランスフォーメーション)は建設業界でも注目されていますが、具体的に何をすべきか分からない経営者の方も多いでしょう。「DXって結局何なの?」「うちのような中小企業でもできるの?」といった疑問をお持ちの方に向けて、本記事では建設業DXの基本から具体的な取り組み方まで、初心者向けに解説します。

建設業DXとは何か

DXという言葉はよく耳にするものの、その本質を理解している人は意外と少ないかもしれません。まずは基本的な定義から確認しましょう。

DXの定義

DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセスを変革し、競争優位性を確立することです。

建設業においては、単なる「紙からデジタルへの置き換え」ではなく、仕事のやり方そのものを変えることを目指します。たとえば、日報を紙からスマホ入力に変えるだけでなく、その日報データを活用して工期を予測したり、原価管理を自動化したりすることまでを含みます。

デジタル化とDXの違い

多くの人が混同しているのが「デジタル化」と「DX」の違いです。

デジタル化は、紙の日報をExcelに変更したり、FAXをメールに置き換えたりといった、既存業務をツールに置き換える取り組みです。目的は主に効率化です。

一方、DXは日報データから工期を自動予測したり、過去のデータを分析して最適な工法を提案したりと、業務プロセス自体を変革することです。目的は新しい価値の創造にあります。

デジタル化はDXの第一歩として重要ですが、最終的にはビジネスモデルの変革まで目指すのがDXの本質です。ただし、いきなりビジネスモデルの変革を目指す必要はありません。まずはデジタル化から始めて、段階的にDXに進化させていくことが現実的なアプローチです。

なぜ今、建設業にDXが必要なのか

建設業界がDXに取り組むべき理由は、単なる流行ではなく、業界が直面する深刻な課題と密接に関係しています。

5つの理由

第一に、深刻な人手不足です。建設業就業者数は減少の一途をたどり、特に若手人材の確保が困難になっています。DXで業務を効率化することで、少人数でも対応可能な体制を作る必要があります。

第二に、働き方改革への対応です。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。日報作成の自動化やWeb会議の活用など、DXによる業務効率化で残業時間を削減することが急務です。

第三に、生産性向上の必要性です。建設業の労働生産性は全産業平均を下回っており、データ活用による無駄な作業の削減が求められています。

第四に、技能継承の課題です。ベテラン技術者の大量退職により、貴重な知識やノウハウが失われるリスクがあります。デジタル化により知見を蓄積・共有することで、次世代への継承を確実にする必要があります。

第五に、顧客ニーズの変化です。施主は工事の透明性を求めており、リアルタイムでの進捗共有など、コミュニケーション方法も変化が必要です。

これらの課題に対して、DXは有効な解決手段となります。

建設業DXの5つの領域

建設業におけるDXは、大きく5つの領域に分けられます。すべてを一度に取り組む必要はなく、自社の課題に応じて優先順位を付けて進めることが重要です。

領域1:施工管理DX

日報や工程管理のクラウド化、AIによる工期予測など、現場管理業務のデジタル化です。最も取り組みやすく、効果も実感しやすい領域のため、多くの中小企業がここから始めています。

領域2:設計・BIM/CIM

3Dモデルによる設計・施工、事前の干渉チェックなど、設計段階でのDXです。大手ゼネコンや設計事務所での導入が進んでいますが、中小企業でも簡易的なツールから始められます。

領域3:現場作業DX

ICT建機による施工、ロボット・自動化技術の導入など、現場作業そのもののデジタル化です。初期投資が大きい領域ですが、国の補助金などを活用して取り組む企業が増えています。

領域4:コミュニケーションDX

チャットツールでの情報共有、Web会議による移動時間削減など、社内外のコミュニケーション効率化です。無料ツールも多く、最も手軽に始められる領域です。

領域5:経営DX

クラウド会計ソフトの導入、データ分析による経営判断の高度化など、経営層の意思決定を支援するDXです。正確なデータに基づく経営判断が可能になります。

(image-alt: 建設業DXの5つの領域を示す図)

中小建設会社でも始められるDX

「DXは大企業がやるもの」という誤解を持つ経営者も多いですが、実は中小企業の方が有利な面もあります。

中小企業がDXに取り組むメリット

中小企業には3つの大きなメリットがあります。

まず、意思決定が速いことです。経営者の判断ですぐに導入でき、複雑な稟議プロセスが不要です。「これは良い」と思ったツールを、翌週から試験導入することも可能です。

次に、全社展開が容易なことです。社員数が少ないため、全員への教育や浸透がスムーズです。大企業のように部署ごとの調整に時間を費やす必要がありません。

そして、効果を実感しやすいことです。小さな改善でも全社的な効果として表れやすく、投資対効果を経営者が直接確認できます。

低予算で始められる施策

DXは必ずしも高額な投資を必要としません。クラウド型の工事管理システム、チャットツール、クラウドストレージ、Web会議システムなど、無料プランや低価格プランが用意されているサービスが多数あります。まずは小さく始めて、効果を確認してから本格導入することが賢明なアプローチです。

DXを始める3つのステップ

実際にDXを始めるには、どこから手を付ければよいのでしょうか。成功するための3つのステップをご紹介します。

ステップ1:現状の課題を洗い出す

まず、現場社員にヒアリングし、時間がかかっている業務や困っていることをリストアップします。経営者が思っている課題と、現場が感じている課題は異なることも多いため、実際に話を聞くことが重要です。

課題が洗い出されたら、効果が大きく実現しやすいものから優先的に取り組みます。すべての課題を一度に解決しようとせず、最も深刻な1〜2つに絞ることが成功の鍵です。

ステップ2:小さく始める

DXで最も重要な原則は、いきなり大規模な変革を目指さないことです。

推奨する進め方は、最も困っている1つの業務から始めることです。たとえば、日報のデジタル化のみからスタートし、慣れてから写真管理、工程管理と段階的に機能を追加していきます。小規模なツールを試し、成功したら次に展開するというステップを踏むことで、失敗のリスクを最小限に抑えられます。

ステップ3:段階的に拡大する

最初の取り組みが定着し、効果が数字で見えてきたら、拡大のタイミングです。社員が「もっと便利にしたい」と思い始めたら、準備ができている証拠です。

拡大の方法は3つあります。対象業務を増やす(日報→写真管理→工程管理)、対象者を増やす(パイロット3名→全現場監督→全社員)、対象案件を増やす(1案件→進行中の全案件→新規案件)というように、段階的に広げていきます。

重要なのは焦らないことです。一つずつ確実に定着させてから次のステップに進むことが、長期的な成功につながります。

DXで解決できる具体的な課題

DXにより、建設業が抱える様々な課題を解決できます。

長時間労働の課題に対しては、日報の自動生成で月10時間以上削減、Web会議で移動時間を削減することで、残業時間を大幅に減らせます。

情報の属人化の課題には、作業記録をデジタル化して蓄積し、過去データから最適解を導き出せるようにすることで、特定の人に依存しない体制を作れます。

情報伝達のミスは、クラウドで最新情報を一元管理し、更新時に自動通知することで防げます。「古い図面で作業してしまった」というトラブルがなくなります。

顧客満足度の低下には、進捗をリアルタイムで共有し、写真付きレポートを定期的に送ることで、施主の不安を解消し信頼を獲得できます。

採用難の課題も、デジタル化で働きやすい環境をPRし、先進的な企業イメージを打ち出すことで、若手人材の獲得につながります。

まとめ

DXは目的ではなく手段です。真の目的は、社員が働きやすくなること、利益が増えること、顧客満足度が上がることです。

DXは特別なことではありません。日々の業務で感じる「もっと楽にできないか」「もっと効率的にできないか」という思いから始まります。完璧な計画を立てるよりも、まず小さく始めることが重要です。

今日からできること

自社のDXを始めるために、今日からできることが3つあります。

まず、社員に困っていることを聞いてみましょう。朝礼で「業務で一番時間がかかっていることは何か」と質問するだけでも、改善のヒントが得られます。

次に、DX事例を調べてみましょう。同業他社や似た規模の会社がどのような取り組みをしているか、インターネットで検索したり、業界団体のセミナーに参加したりして情報収集します。

そして、無料ツールから試してみましょう。多くのDXツールは無料トライアル期間があります。実際に使ってみることで、自社に合うかどうかを判断できます。

まずは小さく始めて、段階的に拡大していきましょう。建設業DXの第一歩を、今日から踏み出しませんか?

【引用元・参考資料】

国土交通省

・「建設業におけるDX推進について」

https://www.mlit.go.jp/

・「i-Construction推進コンソーシアム」

https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/

経済産業省

・「DX推進ガイドライン」

https://www.meti.go.jp/

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

・「DX白書2024」

https://www.ipa.go.jp/

本記事は現場Hub編集部が、建設会社へのヒアリング、業界動向の調査、および上記資料をもとに作成しました。

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